●Gualdaグアルダ●  サンモリッツから東北に延びる谷にあるグアルダは、昨年に引き続き2度目の訪問。  この町並み、というか村並みが良く保存されたのは、鉄道が町の中を通らず、・か谷の下の方を通った事による。登り下りするのも大変な谷の下を鉄道が通ると決まった時、村はパニックに陥ったそうだ。文明から取り残されてしまう、と。そんな話をシルスマリアのホテルのマネジャーから前日の夕食の時に聞いた。  その話の通り、U字谷の底の方にある鉄道の駅からは肩にある村は全く見えない。あまり本数の無いポストバスを利用するか、後は昔人の苦労を忍び自らの足で高度を稼ぐか、だ。もちろん、私たちは昔人の苦労をポストバスの中から遙かに忍ぶ。  村は今までの100年にも渡る間と同じ佇まいの様に見えるたが、村の西の方は建物の改修が行われていて、昔と同じと言っても毎年きっと何処かは少しずつ変わって来ているのだろう。  村にはメインストリートが1本。帰りのバスが出るまるで1時間の滞在時間に村の隅から隅まで訪れる事ができる程の小ささ。  リタイアしたアメリカ人の御夫婦と写真を取り合い、話をしながら散歩した。私達が宿泊している「シルスマリア」と言う名前に引かれたのか、駅で別れる時に何処にあるのか訪ねて来た。1カ月も旅行期間があるということで羨ましい限りだ。  村の石作りの建物には、この地方の特徴であるスグラフィッティと言う紋様や壁画が豊富にあり、窓々は綺麗な花で飾られている。  そんな光景に自然に写真のシャッターがどんどんと下りてしまうが、後日出来上がって来た写真をみると、見た目以上に空気が澄んでいるのだろう、コントラストが強い写真になってしまっている。  白い建物に露出が合っていると空は偏光フィルターもつけていないのに濃紺に写り、空に露出があっていると建物は真っ白になって、スグラフィッティは飛んでしまう。なかなか思った通りには撮れていないものだ。  村の大きさの割りには数が多い子供達の遊び騒ぐ声が狭い街路に響く。彼らの内の何人かはこの村の冬の祭りにカウベルをつけて、今は想像もできない雪の露地を練り歩くのだろう。それを童話にしたアロイス・カリジェの作品群を昨年は訪ね歩いたものだ。  帰りのバス停で出会った地元の小さなおばあちゃん。英語による会話は一切出来なかったが、ロマンシュ語で日本語と同じ「ハーイ、ハーイ」と相槌を打つ姿がとてもかわいく、印象的であった。  去年と同じポストバスの運転手さんに「来年も又来るね」と行って駅へ戻った。何度、訪れても心温まるグアルダだ。