ワイタン 外 灘 Bund

外灘(ワイタン)またはブンドBundと呼ばれる上海でも一番の観光スポット

東側を流れる河は長江の支流の一つの黄浦江。黄浦江の西側は旧来からの上海の街で、一帯は19世紀後期には欧米・日本の租界になっていて、当時の建物が多く残っているエリア。

一方、東側の浦東(プウドン)はダンゴ三兄弟スタイルの東方明珠塔を始め、400~500m級の高層ビルが立ち並ぶ近代エリアで、行くたびに新しいビルが増えているエリア。古い中国と新しい中国がこれほど如実に対比され現れているとこもないだろ。この夜景の美しさは個人的に世界一と思う。(他、全部みたわけではないが)

租界とは諸外国が19世紀後半に中国に作った治外法権を持つ居留地のようなものだが、日本の長崎、横浜、函館などよりも遙かに独立権を持った地域でほとんど領土と同様、上海の租界には「中国人と犬ははいるべからず」とあったそうだ

中国にとって租界は負の記憶となると思うのだが、それは北方民族により司られた清朝の時代のことであるので、現代の漢民族中心の中国人にとっては負の記憶という意識は極めて薄いのではないか、と思われる。その為に、租界時代に建築された多くの洋館はそのまま残され、活用され現代に至って、逆に正の遺産として今日、観光に多大な貢献をしているのは皮肉なものである。

約1Kmに渡る黄浦江西岸沿いの大部分は最初に租界を作ったイギリスのものであり、その南側にはフランス租界、北側にはアメリカ租界、最終的にはその周辺に日本も含めた共同租界が構成された。各租界は各々の祖国の文化様式で自国風の建物を建てたので、今に残る建物や街の風景も微妙にそれら国の違いを反映している。

この地区の洋館の建築様式の特徴としは当時の英国の流行建築様式であった(ネオ)バロック様式、(新)古典主義様式当たりが主流になっていることである。具体的な造形としては
古典形式:ギリシャ神殿風の作り、丹精に並んだ窓
バロック様式:双子柱、複数階を貫く大オーダ(柱)
などにその特徴が現れている
一方では中世のゴシック様式、ロマネスク様式はほとんど見てとれない。(これらは上海に残る教会堂にはみてとれる)

また1930年前後以降に建築されたものは、過去の建築様式要素の採用にはこだわらずに、より合理的(経済的)なオフィスビルの姿で建てられたものも並んでいる。外灘14「上海市総工会」、外灘 23「和平飯店」「中国銀行」などである

建物は前面の中山東一路に南側から順に付けられた地番で「外灘XX」で呼ばれるが、観光ガイドブックに記載されている建物番号とは若干異なる場合があり得る

建物番号
(Click to details)
建物名称
建築年
外灘 1  亜細亜ビル
1916
外灘 3 上海クラブ
1910
外灘 4
有利銀行
1916
外灘 5 華夏銀行
1925
外灘 6
上海安全監督局
1907
外灘 7
バンコク銀行
1907
外灘 9
輪船招商局
1901
外灘12
上海浦東発展銀行
1923
外灘13 上海税関
1927
外灘14 上海市総工会
1948
外灘15 中国外貨交易中心
1901
外灘16 招商銀行
1924
外灘17 
友邦大廈
1921
外灘18 Bund18
1928
外灘23
和平飯店南楼
1906
外灘23
和平飯店北楼
1929
外灘23 中国銀行
1937
外灘24
中国工商銀行
1924
外灘26 中国農業銀行
1916
外灘27 上海対外貿易ビル
1920
外灘28 上海市広播大楼
1914
外灘29
中国光大銀行
1914
おまけ  外灘1
ギュッラフ気象信号塔
1907



外 灘・黄浦江沿い全体風景
外灘 「上海クラブ」付近から北方向の眺め。
朝の早い時間帯は観光客も少なく、光線も良いので撮影のチャンス。余計な看板も、電線もなく、整備されている地区というのが分かる(まあ、赤い中国国旗だけが目立つが・・・)。この風景はこれらの建物が出来た20世紀初頭と、主は変わったがほとんど同じ眺めなのだろう

外灘 北端あたりから南への眺望
夜間はライトアップされるので昼間とは違った様相を見せる。 真中遠方にある王冠型ホテルや左端の高層ビルがやや邪魔をする。

時計台は外灘 13「上海税関」、二本塔は外灘 17「友邦大廈」

緑の屋根・外灘23「和平飯店」~「中国銀行」から北端方向を望む

外灘 12「上海税関」の塔の上にちょうど下弦の月が出ていた。更にその上には小さく木星も写っている。

外灘 23「和平飯店」の屋根にかかる下弦の月と木星
思えば大気汚染の激しい上海でもこの様なクリアーな時もあった(撮影:2012年3月)最近は大気汚染が悪化しているようであり、このようなクリアーな大気は望めないかも

外灘・黄浦江河岸はずっと幅広い公園が続いていて一日中賑わっている。外灘側の洋館群の眺め、対岸の浦東の眺めの二つの全く異なった眺めが楽しめる。目を転じただけで百年の時を越える。

これが対岸の浦東。実際には点滅やパターンを描いているライトも多く、煌めく世界

左は東方明珠塔(468m)、 右の栓抜き型のビルは日系の上海環球金融中心(492m)。写真撮影した2012年では一番高いビルだったが、今はその近くに更に高いビルが建設された。今の上海の人はこの高層ビル群を見てどう思うのだろうか?

浦東側から眺めた外灘 。距離があるのと後ろの高層ビル群や観光船の照明が邪魔し、洋館群は思ったよりは迫力ない眺め。その昔、この租界のビル群を見た上海人はどう思ったのだろうか?



●○●訪問・散策上のコメント●○●
・午前中は浦東側が逆光に、午後は古いビル側が逆光になりま す。写真撮影の場合はその逆で。夜間のライトアップの開始時間は決められています。夜間も9時当たりで帰途につくのが治安上よいでしょう。
・建物撮影は建物前の歩道からの近景と道路を挟んだ黄浦江沿いの遊歩道からの遠景との両方を回ると2時間弱位の時間はみたほうがよいだろう。
・古い建物は大体入館禁止のところが多いですが、ホテルや商店 になっているところは入館出来るようです(小心なのでやったことはない)。建物外観の撮影は何ら問題ありません。
・黄浦江上の遊歩道は監視員がたくさんいて、変な行動したり、 ベンチや柵に登って撮影とかしていると笛で注意をされます。従って一般的治安はよいが、やはり注意は常に必要。
・要注意は「写真を撮ってください」から会話を始め、自然と 「僕らは中国茶セレモニーに行くから一緒にいきませ んか?」と英語、時には日本語で誘い、(その先は知りませんが)怪しげな商売に引き込もうとする2~3名の若者グループがたくさんいること。上海の他の有 名公園等でも同様に、これには注意。
・黄浦江の一般周遊観光船は「外灘1」から南の方へ1Kmの港から 出る。
・外灘 と浦東との行き来は地下鉄が安価で便利。外灘 23の中国銀行の前あたりから出ている「外灘観光隧道」は数名乗りの列車みたいなもので東方明珠塔の下までつながっている。料金高いがトンネルの壁に電飾があり、遊園地の乗り物みたいで、まあ話のタネに一回は乗ってもよいかな?タクシーは遠回りになるし交通渋滞ありがちなので遠慮した方がよいだろう。