西欧建築のアーチ | |
注:ここでの話題は鉄やガラスなどを多用する以前の建築を対象としています | |
西欧建築にあって日本建築にないもの 西欧建築と日本建築の違いは多々あるが、丸みを持った形状が日本建築にはない点だ。もちろん、丸く開けた障子や丸い柱など一部では採用されているが、線気宇建築で普通に見られるアーチやドームの様に構造体自体が丸みを帯びていることはない。 ではなぜアーチやドームが西欧建築には有り、日本建築には無いのか?それには建築方法の二つの工法が関係している。 |
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組積造建築masonry construction 壁を構造体として建築する。すなわち壁を立てて屋根を乗せ、壁に窓や扉を開ける。建物は壁が支える。石やレンガを材料と使用するときに有利。 特に古代文明の地中海沿岸は木材は豊富でないので、この方式が主流となった。(下:ドイツ・トリアの古代ローマ建築) |
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柱梁建築 柱と梁を構造体として建築する。軸組建築、架構式建築、楣(まぐさ)式建築などとも言う。すなわち柱を立て、柱どうしを梁でつなぐ。外部と内部の境として壁を作るが、建物は柱と張りが支え、壁では支えない。木材を材料として使用する時に有利。 日本は木材が豊富なので、この方式が主流となって来ている。(下:木造軸組工法による家屋) |
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アーチの構造と原理 この二つの建築方式の議論はそれだけで本が一冊書けるほどになってしまうので、これ以上の話しは止めて、組積造方式での問題点を言えば構造体である壁にドアや窓を作る方法だ。 単に穴を開けただけでは壁が崩れ落ちてしまう。長い石材を梁として横に渡す方法もあるが、そんな長い石材を運搬して来るのは大変だし、そもそも石材は圧縮力には強いが剪断力に弱い(木材の方が強い)という大きな欠点がある。 そこで考案されたのがアーチ工法。それは石材を円形に積むことで上部からの圧力を上手く横に逃がし、その内部に空間を造る方法。 |
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これを石壁の中に作れば出入口になり、また窓にもなる。更にアーチを奥方向に連ねればトンネルや通路となり、アーチを要石を中心に回転させた形はドームになる。日本人にも分かりやすいアーチの例としては石造りのメガネ橋がある。 下は「石の家」(北海道・北の国から)。数すくなく開口部の狭い窓。上辺はアーチになっている。 |
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ローマ時代城壁(ドイツ・トリアのポルタニグラ) メガネ橋(長崎市) |
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アーチの進化 上部が完全な半円形を成す一番オリジナルな「半円アーチ」は古代から多く使われてきた。しかし、それは上部が半円形という形であるために開口部の幅と高さが一定比率にならざるを得ないという制約がある。 その制約を破り、より自由な造形を可能としたアーチとして尖頭アーチ(ポインテッドアーチ、ランセットアーチ)が考案され、新しい教会堂(ゴシック様式)に採用され、広い窓(ステンドグラス)や複雑な造形に大きく寄与することになった。 |
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アーチの種類 |
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時代の進む中で多様なアーチ形状が生み出されて、石造建築を彩って行った。 A 扇型アーチ B 扇型アーチ C 半円アーチ D 半円アーチ(上心半円アーチ、下駄履きアーチ) E 馬蹄形アーチ F 馬蹄形アーチ G 馬蹄形アーチ(尖頭馬蹄形アーチ) H 尖頭アーチ (ランセットアーチ) I 尖頭アーチ (尖頭等辺アーチ) J ドロップアーチ K 3心アーチ L 扇型アーチ M 4心アーチ N 疑似3心アーチ O ランファントアーチ(片上がりアーチ、偏心アーチ) P フラットアーチ Q 3弁アーチ(3弁半円アーチ) R 3弁アーチ S 3弁アーチ(3弁尖頭アーチ ) T 5弁アーチ U 多弁アーチ V オジーアーチ W 3心アーチ X チューダアーチ Y 三角アーチ Z 肩付きアーチ |
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その他 |
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持ち送りアーチ(迫り出しアーチ) 左右から石材を少しずつ迫り出していくことでアーチを作る手法。 上記のように円形に並べる場合は作業途中が安定しないので木枠などによる支えが必要となるが、持ち送りの場合は支えが不要にできるメリットかある。 力学的構造は通常のアーチとは異なり、加重は鉛直下方向にしかかからない。 |
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ブラインドアーチ アーチを構成するが何らかの理由で開口部が無い、或いは埋められているアーチ。 ・デザイン上の理由でアーチが付けられた ・当初は開口部があったが、その後不要になり埋めた ・壁の片面にニッチなど窪みを作る為に作られたアーチ或いはその構造が外壁にも現れた形 |
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画像・写真引用元 ・kaiken様 ・THISisCarpentry様 ・shyougaiitisekkeisi2581様 ・「A History of Architecture on the Comparative Method」 ・wikipedia「アーチ」項目 |
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