キリスト教会堂建築について
教会堂は昔から欧州の文化のコアであり、その建築においては当時の最新の思想、技術が使われて来た。
従って、教会堂建築は西欧建築の歴史・ポイントを知る上での最適な例になっている。
これを知っておくと、旅行をした時などに知恵となり面白く見学できるだろう。
(注:勉強途中の為、誤り等あり得ます。悪しからず。)

基本的構成
バシリカ型

ローマの集会堂(バシリカ)をベースとしている
横長の長方形あるが、縦棟が付き、全体に十字形(ラテン十字形)を構成することが多い。
祭壇方向(右)への集中性が顕著で、特にカトリックのミサ儀式に適している。

集中型(有心型)

墳墓の形、あるいはそれを囲った形での祭廟に由来していると考えられている。
円形、正方形、正十字形(ギリシャ十字形)に構成される。
カトリック 教会のミサ儀式への適応が難しいが、特別な死者との関係や洗礼等の特殊な宗教儀式が目的でこの形に立てられることも多い。
ビザンチン、ルネサンス時代に目立つ。
(注:左の集中型の例はミケランジェロが設計したサン・ピエトロ教会のオリジナルプランであるが、これではカトリック教会の式典に不都合であり、最終的には横に延長したバシリカ型に改築された)

外観

教会堂はその内部空間が重要であり、建物外側の眺めは近世までこだわらないことが多い。構造体が剥き出しになっていたり、装飾にも力が入っていない。
しかし、入口正面部分だけは別で、そこは教会堂の顔(ファサード)として十分な装飾や塔建築がなされている。

オリエンテーション
地理的な制約がない限り、基本的には東向き(アプスが東側に位置し、扉口が西側になる)に建築される。人は教会内で東方向に歩んでいく。
(注:方向を決めるという「オリエンテーション」というのはここに由来している)
教会堂の平面構成要素(バシリカ型)       

アプス(後陣)Apse
祭壇。アプスは教会堂の中では一番神聖・重要な部分である。内陣、周歩廊、放射状祭室等の全体をアプスと称することもある。

内陣Chancel
チャンセル 教会堂の交差部より奥(東)側中央エリア 聖職者席、聖歌隊席、祭壇などを設置 聖職者しか入れない場所。中央交差部より東側の部分全体を内陣あるいはアプスと呼ぶこともある。

外陣
交差部より入口側の身廊+側廊の部分。或いは側廊部分を外陣という場合もある。

チャペル(祭室、礼拝室)Chapel

教会内の小さな祭壇或いは展示室。通常は聖遺物を展示し、信者は周歩路を歩いてそれを拝する用途で使用。
(注:日本では「チャペル」とは小さな教会堂のことをそう呼んでいる)

周歩廊Ambulatory corridor
アプス内のチャペルを巡る通路

袖廊(翼廊)
本体から縦方向に突き出た部分。教会堂全体を十字形にみせる。この先端部分にも祭壇を設けることがある。また、地理的な条件等でここが出入口として建造されることもある。

身廊Nave
入口からアプスに向けた堂内中央部。真ん中に通路があり、両脇に一般信者の座席が並ぶ。側廊より一段と高い天井になっており、側廊との間はアーケードというアーチ状開口でつながっている。ゴシック時代では身廊部分の高さを競うようなった。

側廊Aisle
身廊の両脇に並ぶ堂内部。天井は低く、窓の関係で身廊より暗い感じを受ける場所。小さな教会堂では側廊はない場合もあり、大きな教会堂の場合は複数の側廊が設置される。
(注:身廊と側廊を合わせた形で3廊式、5廊式と称する。何廊式かは外から見た西入口のゲートの数から分かる。3廊式は中央に大ゲート、左右に小ゲートが設置される)

交差部Transept

袖廊と身廊+側廊の交差部分。高い天井の広間になっているが、ここの上部には塔またはドームが建築されることも多い。

塔Tower

時代にもよるが、西の入口両脇に対の塔が立てられることが多い。塔は一つのこともあったり、非対称形の場合も多いし、場合によっては四隅や中央等多くの塔が立てられることもある。塔は鐘楼として利用される事が多い。

ナルテックス(前室)narthex
入口と教会堂内部(身廊+側廊)の間にある玄関部分

扉口Door

内部の廊数に対応した扉口が設置されることが多い。特に西側の扉口、塔、及びそれらを含むファサード(側面壁)は教会堂の顔であり、扉口回りやファサードには多くの装飾がなされる。側廊にも扉口が設置されることもある。
教会堂の構成要素(垂直面構成要素)
アーケードArcede

身廊と側廊の間に並ぶコロネード(列柱)の上部をアーチでつないだ内部構造。側廊の屋根の一番低い位置の高さにあっていることが多い。

トリフォリウムTrifonium
トリヴューン

アーケードの上に並ぶアーケード状あるいは窓状の構造。背の高い身廊と背の低い側廊の屋根の一番高い位置の差を埋める内部構造。通常、ここから外光は入って来ない。トリフォリウムの外側は屋根裏通路になっていることもある。
教会堂に二階部屋を設ける場合はその部分の堂内への開口部をトリヴューンと呼ぶ(ギャラリーと呼ぶこともあり)。この場合、下からアーケード、トリヴューン、トリフォニウム、クリアストリーの4階層に構成されることもある

クリアストリーClerestorey

側廊の屋根の一番高い位置から上の身廊の壁部分に明けられた窓(あかり取り)  特にゴシック時代には大きな窓(ステンドグラス)が開けられ教会堂内が明るくなると共に、天空から堂内に色付いた神秘な光が降って来るイメージを醸しだす。

ヴォールトVault

身廊の天井のこと。初期は単純な石積みだったが、ピアの造形とも一体化し段々複雑な形状を形成するようになった。実際の屋根はこの上に設置される。

ピア(束ね柱)Pier

ゴシック時代の教会堂内部での柱で、複数形状の柱を束ねたような細工をしてあるもの。実際に複数の柱を束ねるのではなく、石材への切り込みでそのようにみせる。構造的には大きな意味はなく、視覚的な面で石材のと重さを意識させず、垂直面への視線の導入に効果が大。

トレーサリーTracery

ゴシック時代のポインテッド・アーチPointed arch型の窓の上部に作られた飾り部分。

バラ窓Rose window

身廊や袖廊のファサード部分に作られた大きな円形のステンドグラス窓。ゴシック時代から登場。

フライング・バットレスFlying Buttress


大きな窓を持ったゴシック時代の教会堂を力学的に支える為に建物外側に飛び出して作られた支柱構造。

タレット(小塔)Turret

ライング・バットレスや教会堂の屋根に付けられる小さな塔。装飾的な役割と荷重をかけて構造物を安定させる役割がある。

ピナクル(小尖塔)Pincacle

タレットと同様

ドームDome


集中型教会堂の中央、或いはバシリカ型教会堂の身廊と袖廊の交差部に乗せられた円形又は多角形の大屋根。正方形の壁の上に円形のドームを載せる為の工法の一つとしてペンデンティブ・ドームという技術的解決があった。

塔Tower

ロマネスク〜ゴシック時代に交差部或いは教会堂西扉口の左右に作られた。鐘、カリオンが設置されることも多い。また、イタリアでは本体とは分かれて独立して建てられることも多かった。

ロンバルディア・バンド(帯)Lombardia Band


ロマネスク教会堂に特徴的な軒下の波形の飾り。

ガーゴイルGargaile


雨樋の先端に付く怪物の顔かたちをした放出口。ゴシック時代の特徴。なぜ、このような物が教会堂に飾られているかについては幾つかの説があるが、キリスト教が土着の宗教を持った地域に入っていくに布教するに当たって、土着の宗教の部分をキリスト教に取り込むということを行っていった(聖母マリアもその一つ)一環として、土着の宗教の事物も教会堂を守っているとし、土着の人民に親和性を持たせる為という説もあり。
時代毎の建築要素的特徴徴
ビザンチン様式Byzantine(5〜13世紀)
円形、或いは円形を拡張した集中型が多い。二重キャピタル(柱頭)。モザイクタイルの多用。

ロマネスク様式Romanesque(10〜12世紀)
頑丈な厚い壁、小さな窓で構成され、内部はやや暗い。全体的には半円と直線をベースとしたスタイリング。塔をつくることに熱心。現在は大都市ではなく、小都市、田舎に多く残っている。

ゴシック様式Gothic  (12〜15世紀)
暗いロマネスク教会堂から一転して光溢れる堂内を構成した。技術的には「フライング・バットレス」「ポインティッド・アーチ」「ガラス(ステンドグラス)」 の発展と全般的な建築技術の向上がそれを可能とし、大きく、高い教会堂が建築された。全体的には水平(東方向へのベクトル)と垂直方向への強いベクトルを 持つイメージで、細くて鋭角の角を持たない柱やリブ等を多用し、壁の厚さを意識させない。

ルネサンス様式Renaissance(16〜17世紀初)
ギリシャ・ローマ建築の様式(きちんとした比例方式、柱の様式(オーダ)、対称形、円形の活用等)に戻った建築。全体的には極めて丹精なイメージで、建物内部空間と外観との一致も求められた。
ルネサンス後期には次のバロック時代の象徴となるような双子柱とか大オーダなどが一部登場し始め、その傾向を「マニエリスム」という。

バロック様式Baroque(17初〜18世紀)

ルネサンスの丹精なスタイリングから、一転、豪華・複雑なスタイリングへ。 自由な柱の使用(双子柱、大オーダ)、複雑なペディメント/ファサード、楕円等も利用した屋内配置。内部空間は当時流行った豪華絢爛なロココ調室内装飾と組み合わされる事が多いし、内部空間と外観との不整合も自然なこととなった。

新古典主義Neoclassical(18〜19世紀)
ギリシャ建築(オーダ様式)への回帰。独立柱、軸組工法(独立柱+エンタブレチュア)の復活。なおローマ建築への回帰ではなく、その元となったギリシャ建築への回帰。

ネオ・・・様式、・・・リバイバル様式(18世紀〜)
18世紀以降になると新しい特徴的な建築様式はなくなり、一部には過去の建築様式をそのまま取り入れて建築される(リバイバル)、あるいは過去の建築様式を現代的に解釈し直して再構築する(ネオ・・・)ことになった。

ロココ調、アール・ヌーヴォ、アール・デコ
上に示した建築様式は単に外観としての姿だけではなく、その背後には建築物としての構造や力学が潜んでいる。ロココ調、アール・ヌーヴォ、アール・デコなどはその構造論とは無関係であり、建築の様式ということではなく、表面上のデザイン要素として意味を持つ。19世紀以降の建物では鉄骨やコンクリートなどで構造が自由になって来たのでむしろその表面をどう飾るかが重要なテーマとなり、その為にこのような要素が使われることとなった。
教会堂の名称(カトリックの場合)
使徒座聖堂使徒座聖堂
教皇の座のある教会堂。サン・ピエトロ使徒座聖堂のみ。

大聖堂(司教座聖堂)カテドラル
単に規模の大きな教会ということではなく、本来は司教区に一つ置く司教座(カテドラ)が置かれる聖堂のことをいう。そのため司教座教会(カテドラル)とも呼ばれる。結果的にはその街で一番大きな規模の権威ある教会堂になることが多い。

参事会聖堂
司教座は置かれないが、司教座聖堂につぐ権威ある教会堂。

小教区教会堂
教会行政の基本区域である小教区ごとに置かれる教会堂。

バシリカ
建築構造的意味でのバシリカもあるが、カトリックでは由緒ある大型の教会堂を「バシリカ」と称する。例えばスペインのサグラダ・ファミリアは2010年に「バシリカ」と言う扱いになった(司教座は置かれていないので大聖堂ではない)。
教会堂のネーミングの基本
ささげる聖人の名称を付与する。聖マリア・・・、聖ペテロ・・・、聖ルカ・・・等々。
四福音書記者と象徴するもの(天井画、壁画によく登場)
マルコー  =>獅子(ライオン)
マタイ     =>天使
ルカ      =>雄牛
ヨハネ    =>鷲
 
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